死者の奢り・飼育

死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

大江健三郎作品,初めて読みました.と思いきや,「個人的な体験」読んだことがありました.あんまりどんな話だったか覚えてないし,「個人的な体験」は中期の作品,「死者の奢り・飼育」は初期作品集ということで,初めてと言ってよい.
結構これは衝撃.引き込まれる.しかし,なんか,気持ち悪い.主人公の徒労感.飲んだ次の日に二日酔いの頭で読むと,一層気持ち悪い・・・うーん粘っこい?
そうか,なんで粘っこいかっていうと,暗さだけじゃなくて,セクシュアルな面とか,主人公の怒り,興奮,そしてそうか体臭の匂いに関する描写が多いからだな.

一貫した主題は「監禁されている状態,閉ざされた壁のなかに生きる状態を考えること」であったという.ここでいう「監禁状態」とは,時代的にいえば一種の閉塞状態であり,存在論的にいえば「社会的主義」の仮構をみぬいたものの一種の断絶感である. 「死者の奢り・飼育」解説より

主人公たちは,「社会的主義」の仮構をみぬいている.一歩引いている.そして相手に伝わらないであろう,という断絶感を持っている.私が感じたのは,そういった主人公たちが,伝わらない相手を相手にするときの徒労感.なんだか自分も徒労感にとらわれてしまう.主人公たちこそが,まともな人たちであると感じる.そういう点は村上春樹作品と似ている.
「存在の耐えられない軽さ」にあった,キッチュ(俗悪なもの)=社会的に「良い」とされているもの,というのは「社会的主義」の仮構とも言い換えられるということかなー.
大江さんもクンデラさんも,他の作品を読みたくなりました.しかし,私は本当に感想文というものが苦手だなあ・・・