ナイン・インタビューズから引用.
アート・スピーゲルマンへのインタビュー.「マウス」という漫画の著者.「マウス」は,ユダヤ人をネズミに,ドイツ人をネコに仕立てて,スピーゲルマン自身の父親の収容所体験を描いた長編漫画.ピュリツァー賞受賞.

    • ベニーニが作った「ライフ・イズ・ビューティフル」という映画は,一種の寓話であり,コメディであり,ぞっとする話だ.見ていて吐き気がしてきた.試写をポール・オースターと見たんだが,二人とも見た後で首をふって「あいついったい何考えてるんだ?」と言い合ったよ.あとで,ロベルト・ベニーニのインタビューを読んだら,「マウス」に刺激されてあの映画を撮ったというじゃないか.意図せざる結果だ.この映画では,「マウス」の戦略がひっくり返されてしまっている.「マウス」は,メタファーを使って歴史的な問題にたどりつこうという試みだった.一方ベニーニの映画は,歴史をメタファーに変えてしまおうという試みだ.そこでは「アウシュビッツ」は単に「嫌な体験」「悪い時代」の同義語であり,そうやってすべてを一般化することによって,歴史は心底些細なものに変えられてしまっている.収容所というものがこの数年,メロドラマ,コメディの舞台にここまで入ってくると,心穏やかではいられない.